本コバブログ:とはずがたり「本屋大賞2024ノミネート10作考察」

「本と、珈琲と、ときどきバイク。」の
店主がお送りするブログ。
略して“本コバブログ”。

2024年が始まりもう3月も過ぎまして。
今回のブログがなんと今年の初物。
昨年末以来の更新です!
腰が重くてごめんなさいね🙇
一度書き出すと止まらないブログですが、
意外と言葉を紡ぐのって
めちゃくちゃパワーが必要で、
心落ち着かせて向き合わないと
言葉が乱れちゃう。。。
スピード重視でやっつけちゃうと
自分の言葉じゃなくなっちゃうのでね。
そこは自分のブログとして守りたいところ。
気長にお付き合いくださいませ〜。
例によって超長文になりますので、
じっくり読んでくと
小一時間くらいかかるかも😱
お覚悟を笑

今冬は明らかに暖冬でしたが、
3月ともなればもう春が目前。
順調に花粉も飛び交い、目はかゆく、
鼻水も垂れ流しでございますよ。
ブログ書いてる今は
まだ寒い日が続いてます。


ちょっとここで
冒頭からいきなりぶっ込みます。
さらっと重たい話をしたあとに、
今回の主題に入りたいと思います。


今年で三年目となる当店ですが、
存亡をかけていよいよ決断の時が
近づいております。
このままの経営では暮らしの面で、
物理的にも心理的にも
明るい未来が描けずジリ貧状態。
本屋としての挑戦もできないので、
背に腹は代えられない状況となってきました。
また改めてご連絡させて頂きますが、
平日は再び会社勤めに戻らざるを得ない
というのが正直なところ。
でもお店は絶対に潰さない!これは前提です。
つまり、土日のみの営業となりそうということ。
しかも自身の休みも取りつつ、
店番以外の本屋業務もこなしながらなので、
ますます営業時間を絞ることになりそう。。。
基本営業を土日に絞りつつ、大型連休の期間だけ
平日もお店開けるスタイルみたいな、、、
ひとまずはより一層ひっそりと佇むお店となり、
ある意味、潜伏&充電期間みたいなもの。
会社勤めをするということは、
本屋が本業ではなく副業になるということで、
うまく両立できるのか、、、
やってみないとわかりませんが、
カラダ第一で、無理なくできる範囲で
上手に付き合っていけたらと思っています。
温かく見守り、引き続き変わらぬ
ご愛顧をいただけますと幸いです。

まだ未定すぎて、頭の中の話です。
とはいえ、猶予はそんなになく、
もう動き始めねばならないステージ。
という苦渋の決断に直面しております。。。

それでも本屋をやり続ける意思に
変わりはありませんので、
どんな営業スタイルになったとしても
お店がありさえすれば、なんとかなる✊
という心意気で、気構えや気負いを
もう少しラクに考えてみようかと。

それこそお店を営業してても
平日が全てお客さんゼロの日だってあるし、
土日ですらお客さん0〜1人ということもある。
お客さんが本当に少なくなっているなか、
"収入ゼロなのに頑張ってる"というムダ時間が
いよいよ多くなりすぎているという
情けない現状がありまして。
イベント企画やオリジナルグッズ販売など、
集客のための挑戦も何もできない懐事情。。。
何卒、ご理解下さい🙏

どう変更になるかは未定ですが、
引き続き、変わらぬご愛顧のほど、
よろしくお願いいたします。
平日しかお休みが取れないお客様には
ご迷惑をおかけします🙇
今すぐというわけではないので、
また決まりましたら改めてご連絡いたします。


さて、そんな重苦しい話から
今年初物のブログが始まってしまいましたが、
今回の主題はあくまで本屋大賞なのです!
本屋大賞2024ノミネート10作品、
この10作を主観ではありますが、
読み解いていこうじゃあないかと。
そして個人的大賞作品の話でも
語ろうかと思っております。
公式の大賞発表は4/10だそうです。

ひとまず、
今年も無事フル投票に参加できまして、
今回で本屋開業と同時に
続けてきたイベント参加ですので、
3年連続フル投票になります。
(投票には一次と二次があります)
これは一つの目標でした。無事達成。
当店のジミな頑張りの一つです。
来年投票参加できるかは
早速、雲行き怪しいですが。。。

全国の多くの書店は一次投票のみ、
もしくは投票すらしない書店が多いなか、
たいしてメリットもないわりに
わずか3週間足らずの期間内に
10作読破&全てに400字の感想文という
ハードルのきわめて高い二次投票まで
当店が参加する意義は二つあります。

少なからず世相を表す10作を
強制的に読まされることで、時代感や
洗練された言葉感覚を掴みたいのがまず一つ。
それが結果的に"バイクに乗る・乗らない"への
感覚と繋がっているはずとも考えてます。
芥川賞や直木賞などの敷居の高いものでなく、
民間の文学賞というのも大きくて、
我々庶民の感覚を研ぎ澄ますことが
僕にとっては大事だとも考えています。
そして、
各書店や出版社に向けて、
地方の零細本屋の存在の
営業活動にもなる側面もあるだろうと、
こういうところからコツコツと
積み上げられるものも
あるのではないかというのが二つ目。
だからこそ積極的に参加している次第です。
感想文についてもいくらでも手を抜けますが、
僕はガチで400字しっかりと書いてます。
静岡県で最も小さいだろう零細本屋が
数少ないできることの一つとして
本屋大賞と真摯に向き合っているのです。
決してただの本売りイベントとして
だけでは捉えていないのです。

なんか前段だけで早速
めちゃ熱く語っちゃってますね笑
お恥ずかしい限り。

話を戻しまして、
今年のノミネート10作ですが、
当店が参加した過去2年を振り返っても
特に豊作だったなと感じた年でした。
そんなノミネート10作はこちら↓


豊作というだけじゃなく、
ジャンルも児童書からファンタジーまで
過去2年とは異なる幅広さなのも驚きで。
こりゃあ分析しがいがあるかと。

投票の結果はまだわかりませんが、
少なくとも僕が大賞に選びたい本が
なんと4冊も!!!!あるほどに
豊作だったということです。

ついつい長文になっちゃうので、
ヒマな時、ベッドサイド、
何か考えたい時、、、
適当な時間にでもご覧下さい。
読んで頂ければ幸いでございます。
ホントに長いぜ〜?

各本全部掘り下げるまではしませんが、
もちろん10作はネタバレなしで、
表面的になりすぎず語りすぎず、
ちょうどよいバランスを狙って、
"へぇ〜"程度に留められるような
表現を心がけていきます。
ある程度10作のあらすじを
調べておくと理解しやすいかも。

まずは今年の10作を並べまして、

・黄色い家
・君が手にするはずだった黄金について
・水車小屋のネネ
・スピノザの診察室
・存在のすべてを
・成瀬は天下を取りにいく
・放課後ミステリクラブ
・星を編む
・リカバリー・カバヒコ
・レーエンデ国物語


これをどう分解していこうか。。。
もはや一般的なジャンルでは
分けられないほど一冊の中に
いろんなドラマが詰まってるので、
括り方を新たに定義せねばなりませんね。

大きく分けるなら三つ。

A群:「自身への葛藤と選択」
・黄色い家
・君が手にするはずだった黄金について
・星を編む
・リカバリー・カバヒコ

B群:「他者への想像力と選択」
・水車小屋のネネ
・スピノザの診察室
・存在のすべてを
・成瀬は天下を取りにいく
・レーエンデ国物語

C群:「ミステリ入門」
・放課後ミステリクラブ

主人公自身の物語として考えるか、
主人公目線で他者について考えるか、
他者から主人公を客観視するか、
鳥の目線で俯瞰するか、
それぞれの目線の違いで分かれてきそう。
この括り方だと、切り方によっては
この本はAだのBだのと意見が
多様化しそうでもあります。
あくまで主観ですし、僕が各本の主題と
向き合ってみた一つの見方です。
それだけ分解するのが困難でして。
そもそも分解する必要があるかと
言われれば全くありませんよ笑

あくまで僕が
全体の時代感や傾向を俯瞰したり、
自分自身が何に心が動いているかを
"自分の言葉"で知ろうとするための分析。

ブログを読んでいただいている方々には
"へぇ〜"とピンとくる方や、
面白がってくれる方もいるでしょう。
全くの意味不明に捉えられるパターンもある。
一つの見方の参考程度ということで、
お願いしますね。
そもそも"本屋大賞って何ぞや?"
みたいな方いらっしゃいましたら、
すぐ調べられるので、事前検索をお願いします。

話を戻しまして、
いざ3群に分けたはいいものの、
各本の要素がわかりにくいなぁと
パッと見て感じましたので、
さらに分解してみましょうか。
そうすると、
大きく5グループに分かれるのではないかと。

グループA:「擬似家族」
・黄色い家
・存在のすべてを
・星を編む

グループB:「人以外の拠り所」
・水車小屋のネネ
・リカバリー・カバヒコ

グループC:「自己実現」
・君が手にするはずだった黄金について
・成瀬は天下を取りにいく

グループD:「"幸せ"への想像力」
・スピノザの診察室
・レーエンデ国物語

グループE:「ミステリ入門」
・放課後ミステリクラブ

やはり括り方によって
あっち行ったりこっち行ったりと変化します。
各本それぞれ主題はあれど、そもそも
捉え方が目線によって多様になりうるのが
最近の小説の傾向ということですかね。
あと、
人生観を物語にしている小説が
多いというのも本屋大賞全体の傾向か、
それとも時代の傾向か、そんなことを感じます。
投票全体の割合として女性が7〜8割を
占めるのも大きく影響しているでしょう。
なので、"重ため"なラインナップになりがち。
でも重厚なテーマのぶん、
"言葉の美しさ"が際立つ面もあり、
ただの面白さや共感だけではない、
芸術作品鑑賞のような、
琴線に触れる煌めきが多いのも事実。

世をぶった斬り、明るく笑い飛ばせるような
勢いある小説はなかなかノミネートされにくい
傾向があるかとも思います。
SF系に関しても、我々の暮らしから
共感や想像がしにくいせいか、
こちらもノミネートされにくい傾向かと。
なので、"レーエンデ国物語"のような
ファンタジーが今回ノミネートされるのは
とても珍しいことだと思いますし、
その視点で言うと、"グループC"なんかは
勢いある今年の大目玉であり、
新たな風だと感じました。

「正義とも悪とも判然としないあわい」
を描いたものが、今年と言わず
最近の本屋大賞に多い。さらに言えば、
「他者への想像力と自身の選択力」
物語というドラマを通して、我々読者に
投げかけられていると僕は受け取っています。
「少数派やわかりにくい物事への言語化」
「自身が自分の足で社会に立つには」
この二点が昨今の小説全体の
大テーマではなかろうかと。
(今も昔も小説ってそんなものかも)
つまり
「想像力と好奇心を言語化」する感性を
ダイレクトに磨けるのが最近の小説だと
僕はビシビシと感じてまして、
当たり前のことかもしれませんが、改めて
小説のパワーは計り知れない!スゴイよ!!

リアルでも多くの女性・男性が
行きづらい現状から脱却しようと
もがいてますよね。
さまざまな悩みや葛藤を、各登場人物を
通して擬似体験できるのが小説。
小説というのは、じつに
時代とシンクロ率が高いのだなと
改めて強く思います。それでいて
エンタメとしてしっかりと面白く美しく
成り立っているのがさすが作家さんだなぁと
ただただリスペクトするわけでございます。

再び話を戻しまして、
分解したこの5グループは
だいぶ分かりやすくなったかなと。
もう少し掘り下げたいので、ここから
現代社会と絡めて、さらに噛み砕いて
言い換えてみましょうか。

グループA:「擬似家族」
・黄色い家
・存在のすべてを
・星を編む
→ 「家族の在り方を見つめ直す」
血の繋がりが全てではない。
様々な事情から一つ屋根の下、
同居する他人たちが紡ぐ"つながり"は
血縁を越えるのか、破滅を招くのか。
その先に何を掴み、何を失うのか。
「人とのつながり方」に光ある三冊。


グループB:「人以外の拠り所」
・水車小屋のネネ
・リカバリー・カバヒコ
→ 「話を聞いてくれる相手が欲しい」
相手が人間ではダメなんです。
物言わないモノや
言葉の意味がわかっていない動物だからこそ、
話し相手になりうる。
家族にも友人にも誰にも話したくないことって
いっぱいあって、かといって抱え込むには
辛いことって、子供も大人も多いはず。
気持ちを吐き出すことで前に向ける。
結局解決するのは自分自身なんだけれど、
自分の中にある"毒"を溜め込むなという
メッセージでもあるのかなと。
実際ただ聞いてさえくれればいいという
相手を皆欲しいんだろうし、
現代にはそんな場所が圧倒的に少ない。
その裏返しをこの二冊から見て取れました。
でも度を超えて依存しちゃうと自立できなくなる
怖い面もあるなとも考えてしまう。
現代でいえば、そう遠くない未来、
人工知能が人の主な話し相手になるだろうと
捉えてますが、僕の感覚では
対人間よりよほどいいなと思う自分がいます。

もはや人と人は基本的に理解し合えず
トラブルしか生まないのではないかという
気持ちが大きくなってきている自分がいて。

外から見て健全かどうかというよりも、
各々自身の心の安寧には
対人工知能の方が健全なんじゃないか。。。
そんなことを考えてしまった二冊。

人間やってると
疲れることホント多いですよね笑

グループC:「自己実現」
・君が手にするはずだった黄金について
・成瀬は天下を取りにいく
→ 「自分はどう生きたい?」
最も現代を反映した勢いある二冊かと。
日本人の多くは、つい周りの目を気にしたり、
同調しなければならないという心理が
働いてしまう傾向がある。別の視点だと
プライドのために誇張して自分を飾ったり、
自分を良く見せようという"見栄"なんかも
昔からあるとはいえ現代病の一つだろう。
この"同調圧力"と"見栄"を、ハナっから
大胆にぶった斬って堂々と立つか、
それら"妄執"があるから人間なんだと
折り合いをつけて上手に自分や他者と
向き合っていくか
対極にあるようでいて、
共通のテーマをもった二冊だと感じました。
見事に現代を切った、軽快かつ洒脱な描写に、

読書の愉しみが深い満足感あるグループC。
過去にはない新ジャンルような感覚。
"自分らしく生きる"ことの難しさも感じるし、
何者かになりたい自分なのか、なれるのか、
選択して堂々と生きた先に何者かになるのか、、、
結局「どう生きたい?」に集約されると思うし、
誰もが持つ”見栄による自己承認欲求"も
わかっていてもやっちゃうから、空虚感がある。

麻薬のように一時的に満たされたとしても、
本質的に自分を満たしてくれるものではないと
改めて気づかされ、全体を通して

自分の生き方を問われる二冊。

グループD:「"幸せ"への想像力」
・スピノザの診察室
・レーエンデ国物語
→ 「"死"とどう向き合うか」
物語としては全く共通点のない二冊。
前者は医療系哲学小説だし、
後者はファンタジー戦記。

そもそもファンタジーが
ノミネートされるのは珍しい。
けれどその中にいろんな
ドラマが詰まってます。
なるべく延命しようとすることが
必ずしも正解ではない。とか、
お互い惹かれあっていても、
死がわかっているなら、
結ばれるべきでない。とか、
分別や常識のある行動が
果たして本当に正しいことなのか、
正しさだけでは救えない物事もある。
倫理観、道徳、美徳、意地、
男らしさ?、成功とは?、幸せとは?
正解のない答えを通して、
それらと対峙する二冊かもしれません。
これらの考え方は作中の
1シーン1シーンに過ぎないけれど、
なぜか僕のなかには濃く残りました。
レーエンデ物語はあくまでファンタジー。
魔法などは出てきませんが、
いろんな種族がいて、"戦"の時代が舞台。
深読みなんて無粋かもしれません。
ただその世界観を愉しめばいいわけで。
それでも今回ノミネートに選ばれたのは、
哲学的な要素がファンタジーを通して
ドラマチックに描かれているからなのかも。

自分の幸せ、他者の幸せ、国の幸せ
ついて思考を巡らせられる二冊。

グループE:「ミステリ入門」
・放課後ミステリクラブ
→ 「本を愉しむ好奇心を培う」
今回児童書が初ノミネート。
書店員さんの数だけ好みがある中で、
直接的なターゲットではない
大人の書店員さんたちの投票を集めるには、
この本をまず知ってもらうところからかなと。
つまり、出版社の販促力が試される。
ノミネートに至ったということは、
この本がそれだけ認知されたということに
他なりません。一旦読まれればその魅力は
折り紙付きなわけで。
著者である #知念実希人 さんの
ミステリ作家としての知名度もあり、
今回ノミネートまで至ったのではなかろうかと。
児童が読書というものに、
ハマるきっかけが詰まった良作だと思います。
好奇心、謎解き、想像力、言い回し、、、
どれもが少ボリュームの中に込められ
作家の妙技が詰まったシリーズもの第1作目。



今年はこんな感じで
少な過ぎず多過ぎず
5グループに分けられるのではないか。
僕の目線で今10作から感じたことです。
全体の傾向把握の参考までに。

ここまで書いてて、
長い!長すぎる!!笑
でも書いておきたい。というね。
備忘録ブログでもあるので、
正直まだまだ言葉は尽きません。
そして今ブログには
もう1テーマございます。
さらにしばらくお付き合い下さい🙏

僕が選ぶ大賞作品です!!
冒頭にも書きましたが、
今年は豊作で4作も
大賞候補に挙がりました。
この4冊は甲乙つけ難し。
どれが大賞でも間違いなし!
実際、予想なんて当たった試しはなく、
主観では4作なんだけど、
4作とも選ばれないのが本屋大賞の
読めないところです。。。
ですが、この場で主張として
一応公言しておきますね笑
改めてその4作をご紹介。
僕が選ぶ大賞はこの4冊です↓

本屋大賞の投票ルールの都合上、
この4冊に順位を
つけねばなりませんでした。
でも文芸上の差なんてありませんで、
その投票順の微々たる差について
言語化してみましょうか。

僕が投票した順位と
あらすじをまずどうぞ。

第一位:「成瀬は天下を取りにいく」
あらすじ:
中2の夏休みの始まりに幼馴染の成瀬が
また変なことを言い出した。
コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、
中継に映るというのだが…。
さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、
二百歳まで生きると堂々宣言。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、
誰もが目を離せない!
話題沸騰、圧巻のデビュー作。

2023年は全てこの本に持ってかれましたね。
閉塞感ある現代に堂々と自分の足で立つ意義や
力強さを、成瀬を通して五感で感じる一冊。
未来の可能性ある若者の成長を
期待せずにはいられない。
日本を育てるというのは
こういうことなのかもしれない
とさえ思う。

第二位:「星を編む」
あらすじ:
昨年本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』続編!
前作で語りきれなかった各登場人物たちが紡ぐ
繋がる未来と新たな愛の形の短編集。
・前作主人公の櫂と暁海。
二人を支える教師・北原が秘めた過去。
・才能という名の星を輝かせるために、
魂を燃やす編集者二人が繋いだもの。
・花火のように煌めく時間を経て、
愛の果てにも暁海の人生は続いていく。

本作こそ著者が描きたかった本懐では
なかろうかと思うほど洗練された言葉たちに
感動を通り越した美しい"何か"に出会った。
読後、しばらく放心状態になりました。
紆余曲折は当たり前で、
キレイなだけの人生なんてあり得ない。
真摯に目の前と向き合っていくことの
積み重ねでしか育たないものもある。
理不尽だったり、失敗したり、
どうしようもないことを抱えながら、
救われない物事をどう掬い上げて
小説に昇華できるかの極限
を見ました。

第三位:「存在のすべてを」
あらすじ:
平成3年に発生した誘拐事件から30年。
新聞記者の門田は旧知の刑事の死を
きっかけに被害男児の「今」を知る。
事件の真実を求め再取材を重ねた結果、
ある写実画家の存在が浮かび上がってくるが…。
質感なき時代に「実」を見つめる
本当の"つながり"の意義を知る著者渾身の一冊。

あらすじだけを見れば、
事件の真実を追うだけの物語に感じるが、
その過程や真実がわかるにつれて、
正しいことや正しくないことのバランスが
崩れ去っていく。人と人とが紡いでいける
本当の"つながる"という関係性の魅力

ここまで美しく丁寧に描写できた作品を
僕は他に知らない。アートと掛け合わせた
ストーリーも素敵に機能していて完璧な着地点。
そう、この物語は完ペキなんです😳完成度高!
映像化しても間違いなく良くなりそう。

第四位:「スピノザの診察室」
あらすじ:
京都の地域病院で働く内科医・雄町哲郎は、
かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、
将来を嘱望された凄腕医師だった。
哲郎の力量に惚れ込んでいた大学准教授の
花垣は、愛弟子を哲郎のもとに送り込むが…。
現役医師として命と向き合い続けた著者が
到達した、「人の幸せ」とは。
その医師は、最期に希望の灯りをともす。
最期と向き合う一冊。

医師としての矜持、誇り、希望、、、
人それぞれ考え方があるけれど、
なかなか言語化できていることは少ない。
この本を通して、人の死生観にも触れつつ、
"自分の人生を生きることの魅力"を
"自分自身がどこに感じているか"

言語化の重要性を考えさせられる。
ただ惰性で生きているだけではいけない。
矜持や視座みたいな立派なものが
あればいいが、掲げすぎるのも頑なになりがち。
時代によってしなりつつも
ブレない軸のような生き方は
各々皆が見つけなきゃいけないと強く思う。


以上が4冊の順位分けとあらすじ。
読んでみたくなりますでしょうか。
このブログをここまで読んでると
もうすでに疲れましたでしょうか笑
あと少しです。締めはもうすぐ。

実は今回ノミネート10作が発表されてから、
大賞はもうこの一冊にすると
僕の中で決めていた作品がありまして、
それが「成瀬は天下を取りにいく」です!
#静岡書店大賞 受賞作品でもある本作だけに
その勢いたるや、現代をぶった斬る個性の塊の
主人公に全て持っていかれた2023年だったと
僕自身強く感じていたので、
ノミネートされたのは嬉しいし、
それだけ全国の書店員に支持されたということ。
閉塞感ある現代に風穴を開けられた秀作かと。
重厚なテーマや世相とのつながりが
大賞を獲る傾向があるなかで、
勢いと笑いと個性と、煌めく可能性と、
読書の楽しさ満載で読み切れるのが
「成瀬は天下を取りにいく」だったのです。
著者デビュー作というのも驚き。
まさに新進気鋭。
新ジャンルで時代を切り拓いていける
未来の可能性を託して
本作を第一位に投票したわけですが、、、
じつは、
他ノミネート作を読み進めるうちに、
この一位候補が揺らぎはじめてました。

読んだ順としては、
「成瀬は天下を取りにいく」

「スピノザの診察室」

「星を編む」

「存在のすべてを」(しかも10冊目に読了)

この順番も影響しているかもと思いつつ、
あまり関係なかったかも。

僕は、自身のテーマでもある
「自分の生き方」に対する
言語化が巧みな小説に
惹かれる傾向がありまして。
そのなかで、
各登場人物を通して
人生観への共感や発見、
人に寄り添う感性を
言語化した洗練の極みが
際立ったのが今4冊でした。
実に素晴らしい作品たち。
本当に今年は豊作だったのです。

大変悩みましたね。熟考を重ね、
新しさと物語のパワーと、
著者の可能性に光を見たので、
一位をそのままにし、
二位投票「星を編む」については
前作からの続編ということと、
前作は昨年の本屋大賞作品だったので、
敢えて下位にすべきとも思いつつ、
"言語の洗練"という意味では
一位と言っても差し支えないほど
完成度が高かったし、
前作よりも視点が豊富で、
大変多くの気づきをくれたこともあって
第二位となりました。

三位投票「存在のすべてを」については、
テーマの重厚さに隠れた人間の魅力。
飽きさせない巧みな展開性。
文芸作品として、ストーリーとして、
完成度はMAX。バツグンに面白かった。
言葉も美しい。
物語としては一位にしたかった一冊。
ただ作中にアート関連描写も多いので、
僕にとっては大変共感する気持ちはあれど、
創作に馴染みのない方だと
少し置いてけぼりになるかもと
思うところもあって第三位としました。

四位投票「スピノザの診察室」について、
上位3冊と比べるとテーマの重さに対して
読みやすくまとめられた技が光る一冊。
一つ一つの文章が的確な言語表現で、
読み手にしっくりくる。
具体的な医療描写が少ないぶん、
患者と医者、医者と医者、との会話を
通した哲学思考書ともとれるのが
読みやすい一因とも感じるところ。
ただ、医者なので当たり前ですが、
登場人物の皆が優秀で、皆イイ人が前提。
話がスムーズすぎるのが
逆に引っかかったのかもしれません。
主人公と研修医との関係性においても
安易に恋愛ということではなく、
アッサリサッパリしたままで、
もう少し深掘りして読みたかった。
よって上位3冊からは一段階下位に位置。
けれど、一位でも問題ないほど
満足感ある読書体験なのは言わずもがな。


そんな感じで、語り尽くしてみました。
本屋大賞全体のあれこれや、
ちょっとした順位の違いの言語化。
うまく表現できている気がしませんが、
全体を俯瞰したり、部分的に掘り下げたり
頭の中は好奇心でいっぱいでございます。
本って愉しいね♪
改めて思いましたとさ。

さぁ今年の大賞やいかに!?
楽しみです。
大賞発表は4/10(水)予定とのこと。
あと一ヶ月ほどあるので、
ぼちぼち気になった本でも
読み進めるのもよいかもしれませんね。


この度は、
大変長文を失礼いたしました。
そろそろエンディングです🙇
付き合っていただいた皆様、
ありがとうございました。

なんとかこれで、
今回のブログテーマ
#本屋大賞 について
書き切ったと思っています。

ただ面白い本と出会って
一喜一憂してればいいだけなんだけど、
こういう見方をしている人も
世の中にはいるんです笑

長文による散文拙文、
お見苦しかったと思いますが、
何かしら発見に繋がりますと光栄です。

おすすめ4作だけでなく、
今年は10作全てが面白いので、
ぜひ手に取って頂けましたら幸いです。
どの本屋でも扱っていることの多い
10作ですが、なかなか10作語れる
店主がいる本屋は極めて少ないはず。
当店でも扱っておりますので、
ぜひお買い求め下さい🤲

久々の更新、いや、年明けて初更新でしたが、
そのぶん語りまくっちゃいまして、
お手数おかけしました。
今回はこの辺にしておきます笑
長文読んで頂き、ありがとうございました。
次回更新はいつになるやら、、、

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