本コバブログ:書評「君のクイズ」を読んで

「本と、珈琲と、ときどきバイク。」の
店主がお送りするブログ。
略して“本コバブログ”。

今年ももう2月に入りまして、
年始に今年の抱負などを
このブログで綴ろうかとも思ってましたが、
あれやこれやとブログを更新できないまま。
やっとのことで更新です。

今回のお題は本屋大賞2023
ノミネート10作品の一つ、
「君のクイズ」を読んで
感想などを綴りたいと思います。
いつも通り書評ブログです。
ネタバレなしで、
表面的になりすぎず語りすぎず、
ちょうどよいバランスを狙って、
この本が読みたくなるような
表現を心がけます。

このブログを書いているのは、
本屋大賞2023二次投票期間の最中でして、
締切は今2月末まで。
投票する意志のある全国の書店員は、
この期間までにノミネート10作品を
全て読み、全ての本に対して
感想を書かねばなりません。
そしてトップ3を投票して、
全国の投票数から本屋大賞が決まるわけです。
なかなかのハードルです。
昨年は僕もチャレンジしましたが、
今年は果たして間に合うか、、、といったところ。
間に合わない可能性も十分にあるので、
まずは気になる作品から拝読している中、
早速これはブログに書かねばという
本と出合いました!

ちなみにノミネート10作品はこちら↓

その中でも
この「君のクイズ」という作品、
僕が読んだ昨今の小説の中で、
これだけ驚きに満ち、
新境地を見せてくれる本は
なかなか思い当たらずでして、
昨年ノミネートの
六人の嘘つきな大学生
などが記憶に新しいですが、
新鮮さと興奮度合いを言えば、
ダントツかと思います。
タイトルから想像つくように
クイズプレーヤーの話なのですが、
僕も全くの未知数でしたので、
新ジャンルの見せ方とでも言いますか、
とても読書体験が豊かで
興奮する超エンタメ小説。
気づきも多く、中毒性あり!
特に特徴的だったのは、
作中のなかでの時間の経過が
かなり短いというとても珍しい展開な点、
まさにクイズプレーヤーが
回答ボタンを「ピコン!」と
押した瞬間のその一瞬に行われる
脳内地図を見せられていて
めくるめく小宇宙の世界が描かれています。
そしてその小宇宙の見せ方が実に面白い!
主人公によるクイズ思考力の展開性に
ページをめくる手が止まらないわけです。
僕はそういう新しい分野にチャレンジする心と
ワクワクする新鮮味ある作品に一票投じたい。

本屋大賞二次投票に
間に合わない可能性もあるので、
前もって宣言しますと、
僕は間違いなくこの小説を
第1位にします!と言い切れる一冊。
(予想第1位は「月の立つ林で」が
本屋大賞とるんじゃないかなぁと)

ちなみに今作の著者「小川哲」さんは
今年の直木賞「地図と拳」の著者でもあるので、
その文才に磨きがかかった故の勢いを感じます。


当店のSNSでも何度か紹介しておりますが、
ますはあらすじから。

生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に
出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、
対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が
読まれぬうちに回答し正解し、
優勝を果たすという不可解な事態を訝しむ。
いったい彼はなぜ、正答できたのか?
真相を解明しようと彼について調べ、
決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、
自らの記憶も掘り起こしていくことになり、、、。
読めば、クイズプレーヤーの思考と
世界がまるごと体験できる。
人生のある瞬間が鮮やかによみがえる。
そして読後、あなたの「知る」は更新される! 
「不可能犯罪」を解く一気読み必至の
卓抜したミステリーにして、
エモーショナルなのに知的興奮に満ちた
超エンターテインメント!

(出版社サイトより引用)


出版社のサイトなら、
ここまでしっかりと
あらすじが書かれているので、
実はもう語ることがないという笑。
あらすじとしては
十分な内容かと思います。

さらに僕が着目したいポイントとしては、
①クイズプレーヤー同士にしかわからない
 ミステリーの世界を我々に理解できるよう
 上手に落とし込めているエンタメ性
②クイズプレーヤーの技術や矜持を知れる
③クイズを通して得られる"何か"に気づける
この3点。

これらを一つの物語にまとめ上げるだけでなく、
エンタメとしてしっかりと
昇華&洗練されて表現されている驚きたるや!
まさに今まで知らなかった新世界を
覗き見る鮮やかさに興奮しながら
物語の中に吸い込まれていく感覚。
登場人物の中の一人として、
自身の好奇心のアンテナがビンビンに
反応して、謎を解こうと主人公と
一緒に思考する感覚。
思考の仕方もとてもロジカルかつ
魅力的に描写されています。

思わず「なるほど!」と言いたくなる。
クイズにもスポーツ競技的な
一面があり、そこを垣間見れ、
身体性と思考性とがバッチリ噛み合う
瞬間の達成感にテンション爆上がり♪

ホントに興奮しました。
クイズのこと全く知らないのに、
クイズを通して描かれる考え方や思いに、
共感すらありました。
今作のクイズプレーヤーとしての矜持は
クイズ業界だけに留まらず、
さまざま業界に通ずるものが
あると感じます。

そんな新境地を見せてくれる
君のクイズ」。さらに多くの方に
読んで頂きたい一冊となっています。

今回の書評ブログは以上です。
以下余談。

毎年行われる本のお祭り「本屋大賞」。
基本的にはどの一般書店でも展開されてて、
どこでも買える本といえばそうだし、
個人書店はあまり扱わない傾向ではあります。
それでも僕には重視したい思いがありまして。

本屋大賞はただの本売りのお祭りにあらず!
現代を捉える一つのものさしとして
測ることができると僕は考えます。

世の中の多くの書店員が「面白い!」と
感じて票が集まるのは、
世相やその時代感を間違いなく
反映しているからであって、
本・小説を通して"今"がわかる
羅針盤だと思っています。
社会の物事を測る一つの指標と
いうか基準点になり得るわけで。

そこを感じることができれば、
その基準に対して自分はどうかという
感覚のズレや自身の趣向、
強み弱みなどが浮き彫りになる。
もちろん
感覚がズレているからといって
悪いわけでは全くなく、
何がどの程度ズレているかを
知ることが大事で、
ズレてて良い部分、
このズレは独りよがり、
なぜズレていると感じたかなど、
自分について考えることが
できるわけで、それが個性となり
「自分軸」を形成します。
自分のことって自身でも
案外わからないことが多いです。
本によって気づかされる物事は
計り知れません!

そうやって
自身のアンテナ調整としての役割を
担えると思っているからこそ、
狭小な当店でも本屋大賞を
積極的に扱っているわけでして。

さらに一般書店では大々的に
本屋大賞ノミネート作をどーんと
大量に平積みして展開してますが、
本一冊一冊の有り難みが弱くなると
僕は感じちゃうんですよね。
他にも本が大量に陳列されている中なので、
結局数ある本のなかの一冊に過ぎない。

そこで
せっかく投票を勝ち抜いた名作たちなのだから、
一冊一冊を大事に扱いたいなと。
「この本もあの本もいいよね」も良いのですが、
「この本がいいんだ!」という一つの意思表示。
ただでさえ当店内のスペースがない中での
展開だからこそ「オススメなんだぞ!」と
強く発信したいわけなのです。
加えて
一般書店では本屋大賞の本を
買ったからといって、書店員との
会話や共感がほとんど生まれませんが、
個人の小さな書店であれば
お客さんと本の話が自然と生まれるのも
楽しみの一つですしね。
同じ本でも感じ方は人によって
全く異なるので、毎度驚かされます。

そんなこんなで、
本屋大賞も大事にする当店です。
些細なことですが、
そういう思いで展開しておりますので
ぜひ当店でもお買い上げ
頂けますと幸いです。

今回はこの辺で。
長文読んで頂き、ありがとうございました。

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