本コバブログ:書評「宙ごはん」を読んで

「本と、珈琲と、ときどきバイク。」の
店主がお送りするブログ。
略して“本コバブログ”。

今回は町田そのこさんの新刊
「宙ごはん」を読んで
感想などを綴りたいと思います。
ネタバレなしで、
表面的になりすぎず語りすぎず、
ちょうどよいバランスを狙って、
この本が読みたくなるような
表現を心がけます。

いわゆる最近流行りの家族小説です。
ただ、シンプルではなく、
家庭が複雑な家族小説、、、
そこに+αとして各作品ごとに
いろんな要素を込めるわけですが、
今作は「料理」がスパイス。

というのも、
最近このカテゴリーの小説は
本屋大賞しかり、
小説界隈で本当に作品が多く、
間違いなく流行ってます。
いろんな事情を抱えた家族が
どう向き合い、何と闘い、
何を見つけたかというような
類のストーリーなわけですが、
+αの要素で各作品ごとに独自性や
違いを出すといった感じでしょうか。
それほどまでにこのカテゴリーは
バラエティに富んできました。
題材のテーマが現代にとても
マッチしていることもあると思います。
皆それぞれ抱えてるものがあって、
一番近い存在である家族にすら
打ち明けられなかったり、すれ違ったり、、、
容易にリアルでも想像できます。
が故に共感部分も多く、疲れた現代人を潤す
サプリ的な小説なのかなと僕は捉えてますし、
だからこそ、人気が出るのではないかと。

僕もこのジャンルとても好きなので、
比較的読んできているほうかと思います。
僕自身も物心ついた頃から、
家族にわだかまりを抱え続けてきてまして、
まさにサプリ&反面教師として
これらの小説をつい手にとってしまいます。
なのでしっかりと面白いのもわかってるんですが、
いかんせん種類が多いので、
そんな新刊出る度に、毎回
追う必要もないのかなとも思ってきたわけです。

この本を読む前までは。

その前に買っとるやないかーい!
(装丁から漂う良作オーラに
我慢できませんでした)

結果、拝読させて頂き、
不覚にもしっかりと
心に刺さってしまいました。
自分が今求めていた「潤い」に
近かったからかもしれません。
あまり「泣けます」とか「感涙必至」とか
帯に書いてあるような表面的な誘い文句は
めっぽう嫌いなのですが、
恥ずかしながら、この作品を読んで、
シンプルにキレイな涙が
一筋流れている自分がそこにいました。


それでは
まずあらすじから、


この物語は、あなたの人生を支えてくれる

宙には、育ててくれている『ママ』と
産んでくれた『お母さん』がいる。
厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで
接してくれるママ・風海と、
イラストレーターとして活躍し、
大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。
二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、
夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、
花野と暮らし始める。待っていたのは、
ごはんも作らず子どもの世話もしない、
授業参観には来ないのに恋人と
デートに行く母親との生活だった。
代わりに手を差し伸べてくれたのは、
商店街のビストロで働く佐伯だ。
花野の中学時代の後輩の佐伯は、
毎日のごはんを用意してくれて、
話し相手にもなってくれた。
ある日、花野への不満を溜め、
堪えられなくなって家を飛び出した宙に、
佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、
レシピまで教えてくれた。その日から、
宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。

(小学館サイトより引用)


最近のあらすじの中では
かなり詳細に書かれているほうだと思います。
・母が二人
・子供視点
・ごはん(料理)が鍵
という3要素がすぐに把握できるわけですが、
実際の内容は、
・子供自身の成長
・周囲の大人の成長
・折り合いの付け方
・ごはんが意味するもの
としっかりとそのあらすじから
昇華できるほど濃厚な成長物語となっています。
読後もさらにその先を知りたくなりました。

僕がこの本から真っ先に
ピックアップしたいテーマとして、
「大人だってかなり未熟だということ。
逆に子どもは意外と大人なんだということ。」

ここがポイントかなと。

そしてその裏を返すと、
大人たちは自分を未熟だという
自覚がないかつ、その上、
子どもを下に見て、子ども扱いしか
していないという問題点。
子どもを育てる以前に、
大人だろうが子どもだろうが、
人と人との対等なコミュニケーションの
必要性が隠れている気がします。
さらに、そういう大人たちに対して、
子どもたちは自分のことを
子どもだと自覚していること。
ただ、主張や解決の仕方がわからず、
なかなか思いを表現できずに、
我慢しがちなこと。
子どもは基本我慢しているということ。
話を聞き出す大人の重要性が
浮き彫りにされているとも捉えられます

この作品は、
子どもから見た大人が
冷静に淡々と綴られています。
大人の「この行動あの行動」に対して、
子どもにはどう映っているのかが
上手に繊細に丁寧に
言語化されている魅力があります。
その中で、大人も自分の過ちに気づいて
成長していくし、子どもも
ただの子どものままではなく、
そんな周囲の人たちに影響されながら、
自分が周囲のために何ができるかを
考えられる”ヒト”に成長していくわけです。
辛いこともあるけれど、全員が自立して、
依存し合うということではなく、
支え合い、前を向けるようになる、
そんな背中を押してくれる小説でした。
当然、作中で重要な意味をもつ「料理」が
しっかりとスパイスとして効いています。
なぜこの登場人物たちにとって
料理じゃないとダメなのか、、、
その意味がわかったとき、
救われた思いになりました。
これ以上は、僕の思いが
溢れてしまうシーンのため、
言葉になりません。
町田さん、これほど温かくも
素敵な作品をありがとうございます!
ぜひ皆さんに感じてもらいたい部分です。

ちなみに著者の町田そのこさんですが、
今年の本屋大賞にノミネートされていた
別作品「星を掬う」も家族をテーマにした
喪失と再生の物語ですが、
宙ごはん」と題材がかなり似ています。
ところがテイストや世界観が全くの別物でして、
とてもコントラストがきいています。

簡単にご紹介しますと、
星を掬う」では、
子育てを諦めて家族から
離れてしまった母親と
母親が家族から離れたことで
それ以降の人生が完全に狂ってしまい、
不幸のどん底に生きる娘とが
再会することで起こる
いろんなドラマが描かれています。
この再会した時点で、
母親は若くして認知症を患っていながら、
わけありシェアハウスを営んでおり、
そこに娘がさらにわけあって居候するという
いい大人になってから過ごすという
不思議な母娘の共同生活に、
それぞれの思いを重ねながら、
時にぶつかり合いつつ、解きほぐしていく物語。

一見主人公にとって悪者であるはずの
母親がなぜ「母親をやめたのか?」を知るに、
否定し切れない共感を覚えます。
素敵な文だったので、紹介します。
少しだけですが、ネタバレご容赦下さい。

「あの善良で真面目なひとたちと、
あのひとたちと同じような顔をして
一生を過ごせないと思った。
あの家の中での私は、私じゃなかった。
穏やかで控えめで、個性のない
主婦でいるのは、ほんとうは苦痛だった。
私は私らしく、行きたかった。
ううん、私のために、私らしく
生きなきゃいけないと思ったの」
それは、これ以上納得するもののない理由だった。


とても心に刺さる表現だと思いました。

この作品も「宙ごはん」同様に、
家族を考えさせられ、
人の気持ちへの想像力が養われるし、
終始重ためで救いの成分は少なめですが、
背中を押してくれるに違いない物語です!

結局だいぶ長くなってしまいました。
ましてや2作品も紹介してしまいまして。
それでも間違いなく気づきの多い作品。
人の気持ちに寄り添える素敵な物語。
宙ごはん」「星を掬う」を
紹介させて頂きました。
興味を持って頂けましたら幸いです。
ぜひお試しあれ!

今回はこの辺で。
長文読んで頂き、ありがとうございました。

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