本コバブログ:書評「孤蝶の城」を読んで

「本と、珈琲と、ときどきバイク。」の
店主がお送りするブログ。
略して“本コバブログ”。

今回は桜木紫乃さんの新刊
「孤蝶の城」を読んで
感想などを綴りたいと思います。
ネタバレなしで、
表面的になりすぎず語りすぎず、
ちょうどよいバランスを狙って、
この本が読みたくなるような
表現を心がけます。

正直、
これは人を選ぶ小説だと思います。
ですが、
しっかりと面白い。

なぜか?どこがか?
「どれだけ醜態だろうが、下品だろうが
なりふり構わず闘い続ける姿勢や覚悟」
に僕の心が揺さぶられるんでしょうね。

そして、闘い続けていくと
「少なからず付いてくる、
背中を押してくれる人もいるということ」
しかもそれが意外な人だったり
というのも面白い要素。

どれだけ破天荒や暴れん坊に見えても
必ずその裏側や真意が存在する。
結局皆人間で、
強いところ、弱いところがあって、
それを一人で乗り越えられるときもあれば、
周囲に助けられることもある。
どんななりをしていても、
一人では生きていけないと気づかされる本作。
そして「生き抜いてやる」という気概というか、
堂々と立ち続ける「闘う覚悟」にも胸アツ。

題材も難しいし、
頭の中で映像をイメージするのは
面白いですが、
実際に映像化を考えたときには、
極めて難しいという、
かなりの挑戦的作品。
が故によくぞ
ここまで描き切りましたね!
驚きと感嘆が込み上げてきます。

あらすじも語らぬままツラツラと
外堀を感想で埋めておりますが、
いったんここで、
本作の著者「桜木紫乃」さんについて。

僕が今最も推したい作家の一人でして、
その文体、世界観、表現が
僕にドンピシャなのです。
あくまで主観ですので、
皆様にハマるかどうかは
ぜひ同著者別作品の
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー」を
読んでみて頂きたいですね。
北海道が舞台の極寒の世界観に対して、
登場人物たちのキャラの濃さや温かさ、
そして随所に見られる
洒落の利いたコミカルな文体。
落ちも含めて元気をもらいました。
もうたまらんです。

ちなみに、
桜木さんのほとんどの作品は
地元である、北海道が舞台。
ちなみに釧路出身だそうで、
執筆はお住まいのある
江別市で行われているそう。
(Wiki情報です。)

本作「孤蝶の城」では珍しく
舞台は北海道ではないのですが、
主人公の故郷は北海道という設定、、、
めっちゃ北海道推すやん笑

前段長くなりましたが、
あらすじいきまーす。

モロッコへ旅立った
カーニバル真子は
日本で初めて「女の体」を
手に入れた。帰国後、
待ち構えていたのは
雑誌のグラビア撮影と
日劇での凱旋ショーの
大喝采だった。が、
「性転換お色気路線」だけでは
芸能界で生き残れそうになく、
歌手、地方興行などに
打って出るものの
追い詰められていく。
小説でしか描けない
実在の人物の孤独と
苦悶に迫る大傑作。

(出版社サイトより引用)

あらすじを見るに、
なかなかなテーマだと思います。

僕なりにまとめますと、

見た目だけでなく、
中身までも性転換した主人公男性。
それでも完全に「女」に
なれるわけでもなく、
「男」でも「女」でもない
異形の存在になってしまった者が
待っているのは、奇異の目や、
下衆なマスコミへの対応の嵐。
持ち前の器と心の強さで、
自身のカラダを武器にしながら
闘う主人公。ショーや取材等で
常に自分を見せびらかすことを
生業としている以上、
避けられない世間の目に
充足感を得られる一方で、
傷つくことだってある。
不安だってある。
恋愛や性交だってしたい。
そして、
仕事としていつまで表舞台で
立ち続けられるのかに対して
主人公はもがき続ける。
支えてくれる人だっている。
そんな一人の男性であり女性の
心の在り方と闘う姿を追った
ドキュメンタリー小説。


これでどや!
と思うくらい綺麗に
まとまった気がしています。
テーマの重さや複雑さは
あるとは思いますが、
それを有り余る文体や描写力が
補ってくれます。
読みやすいし、繊細だし、
情景描写がピッタリ
当てはまる表現力。
しっかりとボリュームのある
小説だったので、
僕はしっかりと時間をかけて
拝読させて頂きました。

最後にいくにつれて、
ものすごく胸アツな展開が
一瞬訪れるのですが、
そのシーンと巡り合えただけでも
この小説を読む意味がある気がしました。
(その胸アツ部分は完全に主観です)
そして、そのシーンを通して、
主人公の生き様や覚悟が
「カッコイイ」に変わった瞬間だと
僕は思えたのでした。

とても自分ごとにできないし、
共感の要素を見つけるのが難しい
小説でしたが、
これからの時代を強く生きるヒント
みたいなものが
こんな以外な小説からも
存分に感じられる、見事な内容。
素晴らしい。勝手ながら、
芸術的、文化的、教養的価値の
高い本かもしれません。

安易に手に取ることが難しい
ジャンルの本かと思います。
読書好きでもそう簡単には
手に取らないかも。
僕は桜木さんという著者が好きだったのと、
新発見に繋がるかと思い、
手に取りましたが、結果大正解!
一つ、新たな感性が満たされました。

今回は、人を選ぶけど、
読んだことを後悔させない!
そんな小説「孤蝶の城」を
ご紹介させて頂きました。
おそるおそる、ぜひお試しあれ。

今回はこの辺で。
読んで頂き、ありがとうございました。

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