本コバブログ:書評「情熱の砂を踏む女」を読んで

「本と、珈琲と、ときどきバイク。」の
店主がお送りするブログ。
略して“本コバブログ”。

久々に更新の今回は書評。
「下村敦史著 情熱の砂を踏む女 」を読んで
思ったことなどを綴りたいと思います。
ネタバレなしで、表面的になりすぎず語りすぎず、
ちょうどよいバランスを狙って、
この本が読みたくなるような表現を心がけます。

実はこの本、出版社側がゲラ読み書店を
募集してましたので、ちょうどそれに気づき、
思わず挙手。発売前に書店の特権で
フライング拝読させて頂いたのです。

僕も本屋を始めたばかりですので、
ゲラ読みに挑戦したかったのもありますし、
加えて、何よりもこの小説のテーマに大変興味がありました。

・スペイン
・マタドール(闘牛士)
・闘う女性
・スペインの男性観女性観

そして少し脱線しますが、
前職のヤマハ発動機の業務に
発表になったばかりの「新型TMAX」の
デザインの一部に僕、濃く関わってまして、
その時のコンセプトとプレゼン資料に使ったのが
まさにマタドール!!パワーマシンを操るを、
猛獣を扱うになぞらえたわけです。

そんなこんなで
若い頃からスペインや闘牛士には
元々興味はあったのですが、
なんだかこのタイミングで
「読みたい!」「読まなきゃ!」
という不思議な引力を感じたのでした。

読む前のこの本の第1印象は
闘牛士を目指す日本人女性の物語。
この印象は間違ってはなかったのですが、
実際はそれ以上に濃厚でしたね。

さて
まずこの小説のあらすじから。

闘牛士になった兄が死んだ。
演技で大技に挑んだ末の出来事だった。
妹の怜奈は兄の死を悼むために
スペインへと向かう。
だがそこで抱いたのは、
兄がトラブルに巻き込まれていたのでは
という数々の疑念だった。
なぜ、兄は無謀ともいえる大技に
挑まなければならなかったのか。
真相を探るうち、やがて怜奈は、
闘牛の世界に魅入られていき――。
著者が15年かけて綴った
圧巻の闘牛ドラマミステリー。
(出版社サイトより引用)


そう、単なる闘牛士を目指す
日本人女性の話ではないのです。
兄の死の真相を追うという
ミステリー要素も入っているわけでして、
とても読み応えのある情熱的な話。
闘牛のシーンはもちろん、風土や
活字から伝わる登場人物みんなの顔の濃さ。
男女問わず目鼻立ちクッキリ。褐色の肌。
シャツのボタン何個開けているんだというような笑。
性にも奔放な国だし、男女問わずフェロモン
出しまくりなわけです。そういう情熱さもあります。
なんかもう現地にいるような感覚になりました。
食事の描写も多くはないですが、良いですね。

その中でも特に闘牛の描写が
深掘りできていていることに驚きます。
ここまで闘牛の詳細描写がある小説を僕は知りません。
資料や写真集ですらあまり見かけない題材。
勝手ながら、僕が知りたかった&求めていた
小説がここにありました。
闘牛士とは何か、気構え、技術、準備などなど、、、
単なる度胸試しの野蛮な行事ではないのです。
僕は「生死の境界線を舞う芸術」と表現したい。
が故に、とても「情熱的な美しさ」を感じました。

これは小説なので、フィクションなわけですが、
本の帯にも書いてあるように、
著者が15年かけて描き上げた渾身の一冊でして、
その下調べ等の準備を考えると、
スペインや闘牛の描写に関してはノンフィクションと
言ってもよいクオリティだと思っています。

改めて僕なりにこの一冊をまとめますと、

闘牛士を目指していた兄の死。
その死の真相を追う妹(主人公)が、
日本からスペインへと旅立ち、
現地のさまざまな価値観に触れ、
自身も闘牛士の道を目指すように。
女が闘牛士を目指すことへの難しさ、
男たちからの揶揄・野次など、
歯を食いしばって耐える日々。
闘牛士とは何たるかを学んでいく。
着実に前に進むなか、
次第に見えてくる様々な人間模様、
兄の死の真相、
廃れていく闘牛士文化、
闘牛士という美学、
スペインの魅力、
見えてくる真実などなど、、、
主人公が身体的にも精神的にも
成長していくスペインに染まる一冊!
全編通して情熱MAXです!


と熱々仕様となっています。

どうですか?読みたくなってきますかね?
日本人にとってのスペインの闘牛は
外国人にとっての日本の相撲とも
言い換えられるかもしれません。

この本にはあとがきがありませんで、
著者の思いや第三者の見解が見えづらいのですが、
それらは全てこの作品の中にある。
と言っても過言ではないくらい、
解説不要の著者の想い&情熱が
物語に滲み出ているので、
存分に全身で感じて頂きたいですね。

渾身の一冊をどうぞ、
手に取ってみて下さい!
僕激推しの一冊となっています。


今回はこの辺で。
読んで頂き、ありがとうございました。

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