本コバブログ:書評「ひまわり」を読んで
「本と、珈琲と、ときどきバイク。」の
店主がお送りするブログ。
略して“本コバブログ”。
GWも明けまして、
九州は沖縄飛ばして一番の梅雨入り。
静岡県もまもなく梅雨入りなのですが、
その前哨戦?として
土砂降りな土曜、そして曇り空の日曜という
週末からこのブログをお届けしております。
ここで、店主の私事ですが、
今、体調を少し崩してまして、
激しく胃もたれ中でございます。
完全に歳ですね、、、
ずっと胃の不快感が続いてて
一日中胸焼けしてるような気持ち悪さ。
食事量を全体的に減らし、
うどんやお豆腐で
やさし〜〜い食生活を
送る日々が続いております笑
カラダを労わりながらも
本屋に立ち続けております。
試しにコーヒー飲んでみましたが、
く、苦しい、、、笑
元通りになるにはまだかかりそうです。
そんなこんなで、
今回も書評ブログです。
GW中の前回の更新から間を空けずに
また素晴らしい本と出合いましてね。
ぜひこの場で紹介させて下さい。
これも前回同様
本屋大賞発表と同時に発売される
「本の雑誌 増刊 本屋大賞2025」
に載ってた本の一つで、
順位こそ23位でしたが、
このランキングなんて
意味を為さないほどに素晴らしく、
本屋大賞に輝いても全く遜色ない一冊。
今回ブログで紹介したいのは、
著者 #新川帆立 先生による、
「ひまわり」です!
ここ数年の僕のイチオシ作家さんの一人。
ちなみに5/16(金)に別の作品
「女の国会」(下写真)が #山本周五郎賞
に輝いたばかりという!!
嬉しいニュースが入ってきております。
この本、当店で激プッシュな一冊でもあるので、
ぜひご注文お待ちしております。お試しあれ!
でも今回紹介するのは「ひまわり」。
ちなみに本屋大賞の一次投票で
僕が二位投票したのは「女の国会」。
すっかり新川さん推しですね笑
昨年2024年は新川さんの推し本が
たまたま2冊重なった年となりました。

では本題いきます。
書評ブログとうたってますが、
僕によるただの本の感想と紹介です。
もしこのブログを読んでくださる方が
手に取ることがあれば嬉しいなという
その程度のレベルのブログなのでね、
表面的になりすぎず語りすぎず、
ちょうどよいバランスを狙って、
この本が読みたくなるような
表現を心がけたいと思います。

前回のブログと合わせて
障害を持つ人の話が不思議と続きました。
そうです、
今回は事故で全身麻痺となり
肩から上だけしか動かなくなってしまった
女性が主人公の物語。
そしてそんな女性が弁護士を目指すお話。
障害があるない関係なく、
前を向く、自立する、何かを掴もうとする、
"自分を生きる"ための大事な物事が
綴られた小説です!
ではまずあらすじから、
ある日事故に遭い、
頚髄を損傷してしまったひまり。
リハビリを続けるも復職の夢は潰え、
一念発起して弁護士を目指す。
鉛筆も握れず、六法全書も開けない。
言葉のみを味方に、
果たして司法試験を突破できるのか?
「言葉は私の最後の砦。
言葉がある限り、私たちはつながれる」
おしゃべりと食べることが
大好きな33歳のひまりはある夏の日、
出張帰りに交通事故に遭い、
頸髄を損傷してしまう。意識は明瞭。
だけど、身体だけが動かない。
過酷なリハビリを続けるも
突きつけられたのは厳しい現実だった。
「復職は約束できない。できれば
このまま退職してほしい」。
途方に暮れ、役所で就労支援の相談をすると、
すすめられたのは生活保護の申請。
私は人の役に立てるのに、
どうしてその力を発揮させてもらえないの?
ひまりは自立を目指し
司法試験受験を決意する。
思い通りにならない身体で
ロースクールに通い始めるが、
次々と壁が立ちはだかり…。
落涙必至の、人生応援小説。
(版元ドットコムより引用)
かなり濃厚にあらすじが
書かれているので、
必要十分だと思います。
ただし!
ただ障害者が前を向くだけにあらず!
この作品を読んで
「すごいねーがんばったねー」で
感想が終わってはいけません!
所詮他人事だし、とか
身近にそんな人いないから
想像できない、とか
何を言ってるんだい!という話で、、、
いつ我が身に降りかかるかも
わからない想定外の事故なんて
日常茶飯事なわけですよ。
まさに直接的にライダーにも言えること。
私たちは常にイレギュラーと
隣り合わせで暮らしている以上、
最悪の状況になった場合に、
これほど力強く想像力を
培わせてくれる本はないでしょう。
いついかなる不幸に見舞われたとしても、
"自分を生きる"上で大切なのものとは何か、、、
以前、著者・新川さんが
BS番組 #あの本読みました? で
直接言ってた言葉が今も沁みていますので、
ここでご紹介します。
(記憶の範囲で正確性は欠けるのでご容赦を)
「ひまりは事故によって
全身麻痺という
重い障害者になってしまった。
周りから見れば不幸に
分類されるかもしれない、
そのなかで
彼女を救ったのは"知性"だった」
そんな物語を描きたかったそうです。
絶望的状況になったとしても
何かに向けて
"頑張れる心"や"楽しめる心"は
一体どこから湧いてくるものなのか。
障害があろうがなかろうが、
自分の人生を生きる上で大切な考え方です。
個人個人の性格もあるだろうし、
環境が恵まれてるということもあるでしょう。
確かに作中では
「自分が頑張ってきたからだと
一言では片付けられない。
周囲に恵まれていたのも大きい」
といったことも書かれています。
でも一番の根本というか根幹は
本人(自身)の"意思や熱量"なんだと、
そしてそういう考えに至るには、
"教養や知性"が重要なファクターに
なりうるということです。
勉強ができるできない、好き嫌い
頭が良い悪い、環境が良い悪い
と世の中誰しも簡単に片付けますが、
根本は違うと思います。
「このままじゃイヤだ」
「現状をなんとかしたい」
「こうなりたい」
という周囲に左右されない
自分自身の"向上心"そのものが大事だと
いうことではないでしょうか。
それが原動力となるから
好きでもない勉強をしたり、
何かを頑張ろうとできる。
「私にはできない、、、」という人は
"苦手"だからとか
"頭が悪い"からとか
前に進むことから
逃げる言い訳に過ぎないんだと
気づかされるのです。
好きだろうが嫌いだろうが
上手だろうが下手だろうが
得意だろうが苦手だろうが
成功しようが失敗しようが
一般的や普通じゃなかろうが
現状を打破するために
小さな積み重ねを続けられた者だけが
見ることができる景色を
この本を通して感じることができる、
力強いメッセージが込められた稀有な一冊。
そう感じたからこそ、
本ブログで紹介したいと思うに至りました。
(「女の国会」も紹介したいのだけれど、、、)
話の腰を折るように
「そんなにうまくいくわけないやろー」
というヤジが飛んできても
おかしくないとは思いますが、
作中、ひまりは障害者になったことで
辛いことも当然ながら多々ありますし、
絶望感や無力感も味わってます。
それでも前を向いて
"頑張ったから"うまくいったわけで、
弱気なまま意気消沈してしまい、
頑張らなかったら"うまくいかないまま"だと
いうことを忘れてはいけません。
誰しも共通の当たり前のことなのです。
健常者ですらできてないことです。
周囲と比べたって何も変わらないどころか、
惨めになったり敗北感を感じたりするだけ。
自分が前に進むしかないのです。
その差や違いをしっかりと感じ取ってほしい。
世の中に多くの小説があるなかで、
現代人には不足しがちな栄養素が込められた
しっかりと伝わるものがある
素晴らしい作品だと感じましたし、
何度も言うようですが、
障害があるないに関わらず、
どの立場でも共通するテーマだと思います。
一方で
ひまりは事故にあったから
いろんなことを失ったぶん
いろんな良い経験ができたわけですが、
だからといって
事故にあったことが
"良かった"わけではありません。
そりゃぁ事故にあわずに
五体満足で生きていけるに
越したことはない。でも、
さらにはだからといって
"自分の人生"が充実してたかどうかは
誰にもわかりません。
この作品を読めばわかるのですが、
ひまりの性格なら、
どちらの道だったとしても、彼女なら
自分の人生を謳歌できる素養があると思います。
事故にあって幸か不幸か生き延びてしまった。
でも状況は最悪で、、、
障害者となってしまったなら、
その状況下でできることをするだけ。
弁護士になれたとしても
そこはあくまでスタートラインに
過ぎないわけで、
もっと大きな苦労を今後
経験するのではないでしょうか。
要はどのような状況であれ、
成功や失敗という結果論などどうでもよく、
自分の人生、
"自分で考えて自分を生きてるか?"
そのために自分にできる何かを
"コツコツ積み重ね続けているか?"
に尽きるのではないかと。
そう思ったのですよ。
前回の更新と合わせて、
偶然にも障害者と向き合う2冊を
紹介させて頂きましたが、
総じて"自立するための知性"の
重要性に気づかされる作品たち
だと感じましたね。
いやぁ〜イイ本だった〜〜
素晴らしかった〜〜〜
そろそろ締めたいと思います。
毎度拙文ではありますが、
今回は「ひまわり」を
紹介させて頂きました。
障害者の作品が続きましたね。
前回は生まれながら聴覚障害がある人、
今回は事故で全身麻痺になった人、
この両者でも違いはあるものの
"強く生きる人の可能性"感じる豊かな2冊。
じつに味わい深い読書時間でした。
ぜひ手に取って頂けましたら幸いです。
もちろん当店でも扱っておりますよ🤲
今回はこの辺で。
長文読んで頂き、ありがとうございました。
まもなく静岡県は梅雨入り。
ある意味読書の季節到来です♪