本コバブログ:とはずがたり「主観で本屋大賞トップ3を選ぶ!」
「本と、珈琲と、ときどきバイク。」の
店主がお送りするブログ。
略して“本コバブログ”。
花粉が飛び交うなか、
空気の匂いが春めいてきて、
"新しい何か"の到来を感じる良い季節。
僕はそこまで花粉症はキツくない方ですが、
それでも目鼻にくるんです、、、
ふと思ったのですが、
3月の卒業シーズンということで、
今年の中学&高校&大学の卒業生たちは
コロナ禍とモロかぶりの世代。
いろんな思い出や人との距離&接し方など、
どうしても乏しくなってしまう
不運な世代とも言えます。
これは誰のせいでもないけど、
やりきれない悔しさ、切なさ、
ままならなさに対する気持ちのぶつけ先を
探してしまいます。
僕のような当事者とは別の世代ですら
その"行き場のない感情"を
想像できるわけですから、
"かわいそう"とか"しかたない"という
とても安易な気持ちで
俯瞰したくはないなぁと、
一人でも二人でもいいから、
「いろんな気持ちを吐き出す」
その感情を受け取る器として当店を
ご利用頂けたら幸いです。
いくらでも話聞きます。
そんな前段から始まりましたが、
そう、今回のお題は
本屋大賞2023ノミネート10作品、
主観的トップ3の話でも綴ろうかと。
先月末に10作読破しまして、
今年も無事投票に参加できました!
粒揃いの10作、
来る4/12(水)の大賞発表に向けて、
予想なんて当たった試しはないのですが、
勝手気ままにあれこれと書きたいと思います。
ネタバレなしで、
表面的になりすぎず語りすぎず、
ちょうどよいバランスを狙って、
"へぇ〜"程度に
本が読みたくなるような
表現を心がけます。
今年のノミネート10作品は上画像。
僕が選ぶトップ3はこちら。
トップ3と言いつつ4冊笑
そのランキングは
第1位:「君のクイズ」
第2位:「宙ごはん」
同率2位:「汝、星のごとく」
第3位:「方舟」
です!
あくまで主観ですので、
ご了承下さい。
「君のクイズ」や「宙ごはん」に
関しては過去の書評ブログにて
綴っていますので、
ぜひご一読頂けたら幸いです。
「君のクイズ」は
前回ブログの宣言通り"第1位"として
僕は投票しました!
やはり新しさやエンタメ性といった
観点から、読書の楽しさに直結する
この一冊こそ個人的に第1位に
相応しいと思ったわけございます。
一言で紹介文を考えるなら、
「早押しクイズプレーヤーが、
"ピコン"と回答ボタンを押した
その刹那の小宇宙をご堪能あれ!」
ですかね。
「宙ごはん」は
"子どもだって意外と大人"で、
"大人だって意外と子ども"という
側面が浮き彫りになる小説ですが、
子どもと向き合う大人の器量の
必要性に気づかされる、
現代に必要なサプリ的小説かと。
自身の共感部分と、大人の未熟さを
自覚させられ、それでも成長できる
伸び代あるこの物語の温かみが
抜きに出てて第2位としました!
ただし!
僕の琴線には触れたのですが、
今作を読んだお客さんと話してますと、
"子どもが大人すぎる"という点において、
共感できるかできないかによって
投票に差が出る作品でもあるなと
会話の中で気づかされました。
確かに、なるほどと。でもそれは
世代による差なのかもしれません。
なぜなら僕が幼少の頃、
自分の頭ではあれこれ考えてるのに、
大人は勝手に子どもを決めつけて
雑に扱われてきた記憶&実体験が
あったなぁと思う節がありまして。
今の子どもたちはますます思慮深く、
周囲の顔色を伺う子が増えてきてると
聞きます。だからこそ、
この「宙ごはん」が現代小説として
受け入れられる器のある本かと。
大人の教養が試される気づきの多い本。
これも一言で紹介文を考えるなら、
「子供も大人も同じ目線で
話を聞いてあげてください。
そこに大切な気づきがある。
一つの家族とその周囲たちの
心の成長物語。」
ですかね。
続いて同率2位の
「汝、星のごとく」ですが、
2020年の本屋大賞作品
「流浪の月」でおなじみ、
"凪良ゆう"さんの作品。
ちなみに「流浪の月」に関しては、
過去ブログで語ってますね。
そしてこの新作なんですが、
まず出版社のあらすじを引用しますと、
その愛は、あまりにも切ない。
風光明媚な瀬戸内の島に育った
高校生の暁海(あきみ)と、
自由奔放な母の恋愛に振り回され
島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、
惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを
描き続けてきた著者が紡ぐ、
ひとつではない愛の物語。
とある。
僕がこの小説を読んで真っ先に思ったのは
「生きるって本当に難しい」ということ。
ましてや「やりたいことをして自由に生きる」
なんてのは不可能とすら思えるほど
辛い現実を見せつけられる物語でした。
皆当たり前のように生きているが、
それぞれ抱えているものがあり、
"そのようにしか生きられない"場合も
多いんだなと深く余韻が残る。
そんなやりきれない事情を持つ男女の半生を一例に、
自分自身の思いと重ねて読むことができる、
まさに「自分と向き合う本」と言えるのかなと。
家族の問題、生まれた土地・環境の問題、
理不尽やままならなさなど、
さまざまに問題はあれど、
"自分の人生"と向き合い、前を向き、
闘える"心"を強く持ちたいと思った。
不器用で切なくてとても美しい物語。
と僕は表現します。
これも一言で紹介文を考えるなら、
「不器用な二人が
自分の人生と対峙して
折り合いをつける救いの物語」
かなぁ。
最後に3位の
「方舟」です。
これは衝撃作!!
ミステリというか推理ものに
こういう展開があったか!と
驚かされた一冊。
驚きのギミックに一気に第3位まで
急浮上投票とさせて頂きましたね。
出版社のあらすじを見ますと、
大学時代の友達と従兄と一緒に
山奥の地下建築を訪れた柊一は、
偶然出会った三人家族とともに
地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、
扉が岩でふさがれた。
さらに地盤に異変が起き、
水が流入しはじめた。
いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。
生贄には、その犯人がなるべきだ。
犯人以外の全員が、そう思った。
タイムリミットまでおよそ1週間。
それまでに、僕らは殺人犯を
見つけなければならない。
設定は至ってシンプルですね。
ある空間に閉じ込められて、
タイムリミット付きの
少ない人数間での連続殺人事件。
その謎解き推理小説です。
僕の感想としては、
推理小説にまだこんな抜け道があったとは!
至ってシンプルな条件にも関わらず、
圧倒的緊張感と恐怖。
ただこの場合の恐怖というのは、
殺人事件のことでも、
タイムリミットのことでもなく、
「殺人の動機」にある。
その全てがクリアになったときには
もう全て遅い。読者ですら
ゲームオーバーとはまさにこのこと。
なんて性格の悪い小説なんだ!
読み終えた瞬間"震えました"。
良い意味でも悪い意味でも笑
という感じで、
この本の一言紹介文は
至ってカンタン!
「すべてがクリアになった時、
読者もゲームオーバー」
に尽きますね。
今回のノミネート10作品は
どれも甲乙つけ難いほど面白かったです!
強いてトップ3を挙げるならという感覚で
選んだわけですが、
この10作品を簡単に
分析してみたいと思います。
まず大きく2つのカテゴリに
分けられると思ってます。
A群:人の成長、自身と向き合う系
・川のほとりに立つ者は
・宙ごはん
・月の立つ林で
・汝、星のごとく
・光のとこにいてね
・ラブカは静かに弓を持つ
B群:ミステリー
・君のクイズ
・方舟
・#真相をお話します
・爆弾
A群はここ数年間人気の傾向がある
カテゴリーですね。
価値観の多様化する現代において、
人とのすれ違いや、生きづらさを
抱える人たちに焦点を当てた
読者がそれぞれ"気づき"や"救い"を
感じることのできる辛くも優しい分野。
そして今年の傾向として多いなと感じたのが、
このB群。ミステリー系。
これが今年だけなのか来年も続くのかは
わかりませんが、ここでミステリー分野に
多く票が集まったのには時代背景といい、
何か理由があるはずだと思います。
コロナ禍含め、この窮屈な現代だからこそ、
創作の世界の中だけでも
大事件が起きる"不謹慎なワクワクさ"を
見たがっているのかもしれません。
そしてここから
さらに細かく分けていきます。
A群は3種類、B群も3種類くらい。
A群①:複雑な家庭で育つ自身の成長と
価値あるものに対する視点
・宙ごはん
A群②:複雑な家庭で育つ男女や
同性間での恋愛観&人生観
・汝、星のごとく
・光のとこにいてね
A群③:他者に触れ自分を知る気づき
・川のほとりに立つ者は
・月の立つ林で
・ラブカは静かに弓を持つ
B群①:挑戦的エンタメ
・君のクイズ
B群②:推理もの
・方舟
・爆弾
B群③:現代を切る怖さ
・#真相をお話します
とここまで分けてくると、
僕自身のアンテナが
何に引っかかっているのかが
少し見えてきます。
①.「エンタメ性があるか」
②.「新しい挑戦をしているか」
③.「目に見えない価値の美が感じられるか」
④.「楽しい読書体験になり得るか」
書いては見たものの、
結局どの作品にも当てはまる気が、、、
それでも第1位にした「君のクイズ」だけは
すぐに決まりましたね。
やはり①〜④の全てが満遍なく
わかりやすく作品に詰まってる点で最高評価です♪
続いて第2位にした2作品、
「宙ごはん」と「汝、星のごとく」ですが、
これらは"美しさ"と"気づき"が多く含まれていた点が
高評価。考えさせられる小説なので、
エンタメ性や目新しさは弱いものの、
しっかりと"救い"の物語として昇華されているのを
感じられたのが上位に登った理由ですね。
甘い考えかもしれませんが、
どんな辛い内容だったとしても
結末には"光"があって欲しいと、
その可能性を感じて本を閉じたいと
普段から思っている僕でして。
そして第3位「方舟」ですが、
これは読者をしっかりと騙せるだけの
"新しい仕掛け"というか"驚き”に関して
しっかりとエンタメ性があった点を高く評価したかった。
美しさや考えさせられるといった"深み"は弱いものの、
「騙された〜」の読書体験の楽しみが抜きに出てたので、
第3位に急浮上したわけでした。
今回はこんな感じで
今年の個人的
本屋大賞トップ3を
さらっと紹介させて頂きました。
4/12(水)の大賞発表まで
あと1ヶ月!
果たしてどうなるのか!?
楽しみに一緒に待ちましょうね♪
受賞スピーチはYouTubeで
生放送されますので、
そちらも忘れずに!
今回はこの辺で。
ありがとうございました。