本コバブログ:書評「ふるさと銀河線」を読んで

「本と、珈琲と、ときどきバイク。」の
店主がお送りするブログ。
略して“本コバブログ”。

今回は書評です。
「高田郁(かおる)著 ふるさと銀河線」を読んで
思ったことなどを綴りたいと思います。
勿論ネタバレなしで、表面的になりすぎず語りすぎず、
ちょうどよいバランスを狙って、
この本が読みたくなるような表現を心がけます。

上画像にあります、本と一緒に写る電車模型ですが、
当店のすぐ側を走るローカル線
「天竜浜名湖鉄道、略して天浜線」
をプロのモデラーさんに頼んで作製して頂いた逸品!
本作には天浜線は登場しませんが、
まさに題材がローカル線がつなぐ物語ですので、
少し写真に洒落っ気を出してみました。



「あぁ、いい本だ」
読了後、息をつくように出た言葉。
まさにそんな本。

前回の書評ブログ「静かな爆弾」でも
同様に「あぁ、いい本だ」と思ったのですが、
今作は「人と人との繋がりや温かみ」を
描いている点で“心から”いい本だと思ったのでした。

著者の高田郁さんは基本歴史もの、時代ものがメインの作家。
今作は初めて現代に目を向けた小説だそうです。
それでも2013年の本なので、新刊ではありません。
今なお増刷続くまさに掘り出し物の一冊。

まずあらすじから、

両親を喪って兄とふたり、道東の小さな町で暮らす少女。
演劇の才能を認められ、周囲の期待を集めるが、
彼女の心はふるさとへの愛と、夢への思いの間で
揺れ動いていた(表題作)。苦難のなかで真の生き方を
追い求める人びとの姿を、美しい列車の風景を
織りこみながら描いた珠玉の短編集。
(出版社サイトより抜粋)


このあらすじだとちょっと重めに
表現されているかもしれません。
確かに辛かったり疲れていたり、
なかなか明るくはない事情ばかりだけど、
未来はちゃんと少しだけ明るいぞという
希望を感じる、背中を押してくれる
小説だというのが僕の印象。

ローカル電車の走るエリアを軸に
その電車と登場人物との繋がり方や、
様々なドラマを描いているわけですが、
その描き方が感受性くすぐるポイント。
悲しみを伴った旅だったり、
苦楽を共にしてきた電車通学だったり、
疲れ切って帰宅中の通勤電車だったり、
電車がすぐ側を通るアパートに住む人の暮らしだったり、
などなど、全9篇からなる短編集。

良いこと悪いこと含め、人々には皆
抱えてるストーリーがあり、電車がそれを運んでくれる。
そんな優しい話の数々です。

著者の高田さんは、
人情のある話を得意としていると
個人的には感じていますが、いかんせん
どう人との繋がりを描くかの文体表現が素敵。
心に優しい火が灯るような感覚。芯から温まるような。
そんな描写が美しいと感じたのでした。

最後に
著者あとがきがら少し紹介させてください。

「生きにくい時代です。辛いこと哀しいことが多く、
幸福は遠すぎて、明日に希望を見いだすことも
難しいかもしれない。それでも遠い遠い先にある
幸福を信じていたい。〜中略〜
あなたの明日に優しい風が吹きますように」

とありました。

高田さんの込めた優しくも熱いメッセージに
心打たれますし、その想いがしっかりと
作品に表れているところもズレがありません。

ぜひ皆さんも読んでみて頂きたい一冊ですね。


今回はこの辺で。
読んで頂き、ありがとうございました。

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